訪問看護・訪問介護の応援ブログ「楽する日記」

混同されがちな介護と医療ですが、このふたつは異なる概念です。そのため、一見すると「介護の一環」として見える行為でも、実は医療行為のため介護士では対応できない場合があります。「どこからが医療行為か」をしっかり把握し、適切な介護ができるようにしておきましょう。
介護士ができる介護には、食事や排泄、入浴など直接利用者の方に触れて行う「身体介護」と、調理や洗濯、買い物などの「生活援助」のふたつがあります。
これ以外にも、以下のような行為であれば介護士でも対応できます。ただ、薬を使うものに当たっては、「本人もしくは家族から要望があった場合」「家族医師や看護師など医療職員の指導に従って行う」となっているので、注意してください。
こうしてみると、「血圧測定ってできて当たり前じゃない?」と思われるかもしれませんが、こうした行為も10年以上前は介護士では対応できなかったのです。
それでは、訪問介護士では対応できない医療行為にはどのようなものがあるのでしょうか?訪問介護の現場でよくある事例をみていきましょう。
摘便とは、自力での排便が困難な人に対して行う医療行為で、実際に肛門に指を入れて排便を促します。浣腸と少し似ていますが、摘便は間違うと腸を傷つけ、出血させてしまうこともある、専門的な技術が必要とされる医療行為です。
褥瘡(じょくそう)とは、いわゆる「床ずれ」のことで、寝たきりに方によく現れる現象です。褥瘡になっている部位は、非常にデリケートで傷つきやすくなっています。褥瘡部位の水洗い、ガーゼ交換、おむつ交換などが介護士でも対応可能ですが、褥瘡部位の消毒、外用薬の添付、特定の医療材料の交換は医療行為であり対応できません。
糖尿病患者の方の中には、血糖値をコントロールするために自分のお腹に自己注射をしなければいけない人がいます。この行為は、本人が行う場合には問題ないのですが、介護士が行うのは「注射は医療行為」であるため禁止されているのです。また、これに似た「針を刺して血糖値を測定する」という行為も、介護士では対応できません。
訪問介護士が対応できる行為とできない行為の他にも、「条件を満たせば実施できる行為」や「実施はできても指導などの判断はできない行為」があります。
血圧測定や褥瘡部位以外への軟膏・外用薬の添付、内服薬の服用補助は介護士の対応できる範囲です。しかし、それらを実施した後に、その結果から、
「血圧が高いので◯◯(例:薬の量を減らすなど)してください」
といった指導を行うことはできません。これらは医療行為の範囲になるからです。
訪問介護士が対応できる医療行為の幅は、どんどんと広がりつつあります。この状況は、痰の吸引や経管栄養への対応など、現場のニーズに制度が徐々に追いついてきたといえるでしょう。
ただ、中にはまだ介護士では対応できない行為も多々あります。対応できる範囲とできない範囲の線引きをしっかりと把握し、正しい介護につとめましょう。